堤真一主演、日本の映画である。
衣料品の営業マン長谷部真次は、子供の頃を思い出していた。
真次は、三人兄弟の次男だ。
回想。
豪邸の庭で3人でキャッチボールをしていると、父が帰ってきた。
兄弟は、慌てて出迎えにいく。
父は、口ごたえする母を張り倒し、奥へ消えた。
現在。
真次に弟から電話があり、父が倒れて入院したと知らされた。
父は彼に会いたがっているという。
地下鉄の駅で電車を待っている時、彼は一人の老人と出会った。
恩師の野平先生だった。
先生も彼を覚えていて、その日が兄・昭一の命日だということを覚えていてくれた。
東京オリンピックの年、昭和39年に、昭一は交通事故で亡くなったのだった。
気がつくと、周囲の人影がなく、電車がなかなかやってこない。
真次は、先生を残して、別の路線に乗り換えることにした。
通路を急いでいると、亡くなったはずの兄がエスカレーターに乗っているのが見えた。
まさかと思ったが、彼は兄を追いかけた。
そして地上に出た。
そこは、古い街並みが残る商店街だった。
昭和39年、開通したばかりの新中野駅から出た彼は、若き日の兄を見つけて声をかけた。
父と喧嘩して家を飛び出したその日、兄は亡くなったのだが、まだ時間はあった。
叔父だと偽って、真次は兄を家に連れ帰った。
「今夜は二度と家を出るんじゃないぞ」と言い聞かせて、彼は立ち去った。
そして、地下鉄に乗ったところで、現在に戻ってきた。
会社では、上司の岡村と愛人でもある軽部みち子が、彼の言うことを信じてくれた。
疲れていた真次は、みち子の部屋で眠ってしまった。
すると彼は、戦後間もない頃の東京にいた。
とても切なくなる作品だ。