中国の映画である。
1980年代初頭。
湖南省西部の山岳地帯。
長年郵便配達をしてきた父親が引退し、24歳の息子が跡を継ぐことになった。
何時間も山道を歩いて、郵便物を集配する。
膝を痛めた父は、配達を続けるのが難しくなったのだ。
早起きした父は、郵便物を仕分けしてリュックに詰めた。
配達には、いつも飼い犬の「次男坊」が一緒だった。
息子が出発するとき、次男坊は父のそばを離れない。
父は身支度をして、息子と共に出発した。
二泊三日の旅だ。
次男坊も、いつものように意気揚々と二人を先導した。
郵便配達が忙しく、あまり家に帰らなかった父に、息子は距離を感じていた。
息子は父を「あなた」と呼ぶ。
気まずさを感じながら歩き続け、最初の村に着いた。
集配所には誰もいない。
次男坊が外で吠えると、それが合図になり、係の人がやってきた。
それは、いつものことだった。
出発の時、大勢の村人が来ていた。
父の引退を知って、見送りに来てくれたのだ。
父がみんなに慕われているのを見て、息子は誇らしかった。
次の村。
役場に届ける前に、一人暮らしのお婆さんを訪ねた。
目の見えない彼女のために、父は手紙を読んであげた。
次は、トン族の村だった。
可愛らしい少女が、二人を迎えた。
二人は、ここで一泊する。
その日は結婚式があり、披露宴の御馳走が出た。
酒も振る舞われた。
息子は、少女と踊った。
父は息子を見ながら、昔のことを思い出していた。
この作品は、父と息子の物語である。
初めのうち「ヘリの時代に徒歩で配達するなんて」と批判的だった息子が、父の苦労を知ったり、多くの人と触れ合って、変わっていく。
美しい風景と音楽を楽しみながら、ゆったりと時が流れていく作品だ。