イギリス、ウェールズ地方。
初老の男性ヒュー・モーガンは、生まれ育ったロンダの谷を去ろうとしていた。
ヒューは、楽しかった子供の頃を思い返した。
50年ほど前、19世紀末の話。
ヒューは10歳だった。
父ギルムと、歳の離れた5人の兄は、炭坑夫として働いていた。
仕事から帰ると、彼らは母ベスのエプロンの上に賃金を置き、姉アンハードが沸かした湯で体を洗う。
そして、みんなで夕食を取る。
その後、父が息子たちに小遣いを配る。
長兄イヴォールが、優しくて美しい女性ブローウィンを家に連れてきた。
幼いヒューは、彼女に恋心を抱いた。
イヴォールとブローウィンは、若いグリュフォード牧師の取り持ちで結婚した。
この時、出逢ったアンハードとグリュフォードは、互いに惹かれ合うようになった。
ある日、炭鉱主が賃金の引き下げを発表した。
ギルムらベテランは、石炭価格の下落が原因だと考えていた。
しかし実際は、鉄工所が閉鎖され失業者が出たため、安く雇える人間が増えたのだった。
それを知った次兄イアントたちは組合を結成すべきと主張したが、父ギルムは反対した。
やがて、そんな父についていけなくなった息子たちは、家を出た。
組合を結成したイアントたちは、ストライキを決行した。
ストライキは長引き、反対していたギルムは炭鉱主側だと決めつけられ、嫌がらせを受けるようになった。
冬。
吹雪の中、炭坑夫たちの野外集会に乗り込んだベスは、「ギルムに手を出したら殺してやる」と、みんなをやり込めた。
その帰り、ベスは足を滑らせて川に落ちた。
ヒューが助けを呼んだおかげでベスは助かったが、ヒューも川に転落し、足に重度の凍傷を負ってしまった。
心に染み入る作品である。