チャン・イーモウ監督、チャン・ツィイー主演、アメリカ・中国合作の映画である。
青年ルオ・ユーシェンは、都会で働くビジネスマンだ。
三合屯という村で生まれ育ち、村で唯一大学まで進学した秀才だ。
ある日、村長から父親の訃報が届いた。
父は、小学校の教師をしていたが、老朽化した校舎を建て直すために奔走していた。
父は、吹雪の中で倒れたという。
ユーシェンは、急いで帰郷した。
母は、父が教えていた小学校の前で、1人泣いていた。
父の遺体は町の病院にあり、村まで運ばなくてはならない。
昔からの習わしでは、担いで同じ道を戻ってくる。
母は、そのようにしたかった。
しかし、村には老人と子供だけで、担ぎ手がいない。
村長は、トラクターで運ぶことを提案した。
母は、息子に連れられ帰宅すると、棺に掛ける布を織り始めた。
場面は、40年前に飛ぶ。
村に、小学校の先生が来た。
二十歳の青年だ。
挙って迎えに出た村人の中に、十八歳のチャオ・デイがいた。
チャオ・デイは、先生に一目惚れした。
やがて、村人が校舎を建設する。
男は建築を、女は食事を担当した。
チャオ・デイは、真心込めて「先生のために」 料理を作った。
完成した校舎の梁には、習わし通りに、村一番の美人が織った赤い布が巻き付けられた。
村一番の美人は、チャオ・デイだった。
先生は、毎日授業が終わると、遠くから来ている子供達を送っていった。
チャオ・デイは、毎日、待ち伏せし、少し離れたところを歩いた。
実は、先生も赴任した当日に、赤い服を着ていたチャオ・デイを見かけて、気になっていたのだった。
チャオ・デイは、昼食に招待した。
昼食のあと、夕食の約束もした。
しかし、先生は町に呼び戻されてしまった。
文化大革命の、影響が及んでいたのだった。
チャオ・デイは、先生が約束した日をひたすら待ち続けた。
淡々とした、物語である。
それでも引き込まれるのは、チャン・ツィイーの演技が魅力的だからだ。
当時、18か19歳。
田舎の娘役ゆえ、化粧っ気が全く無い。
素朴で純真な少女を、全身で表現している。
この作品は、現在をモノクロに、過去をカラー映像にしている。