役所広司主演、日本の映画である。
1959年。
小説家の伊上洪作は、病床の父を見舞うため、伊豆の実家を訪れた。
そこには、妹二人も来ていた。
洪作は、古いお守りを手に取って、少年の頃を思い出していた。
戦時中、父が台湾に赴任することになり、洪作一人を残して、一家は引っ越して行ったのだった。
洪作は、曽祖父の妾である「おぬい」に預けられた。
「土蔵のばあちゃん」と、洪作は呼んでいた。
洪作は、母に捨てられたのだと信じ込んでいる。
父が持ち直した様なので、洪作は東京に戻った。
帰りがけ、母の様子が気になった。
痴呆の兆しが出ていたのだ。
家では、次回作の出版に向けての作業で、てんやわんやしていた。
ただ、反抗期の三女琴子は、一人部屋にこもって、カタツムリの写真を撮っていた。
夜、父が亡くなったと連絡があった。
1963年。
一族が集まって、母の誕生日を祝った。
この頃には、母の痴呆は進んでいて、洪作はショックを受けた。
その後、妹の志賀子夫婦が、実家で母の面倒を見ていた。
ところが、志賀子の夫が怪我をした。
さらに痴呆が進んだ母の面倒が見きれなくなった志賀子は、洪作に助けを求めてきた。
やむなく東京に引き取ることにしたが、母は、姥捨山に連れて行かれるといって、激しく抵抗した。
なだめすかして東京へ連れてきたものの、母の行動は、洪作の執筆活動にも影響してきた。
そこで琴子が、軽井沢の別荘で母の面倒を見ることになった。
この作品は、井上靖の自伝的小説に基づいている。
痴呆が進み、徐々に壊れていく母を演じる樹木希林が、素晴らしい。