夫・優介が失踪して3年、妻の瑞希はピアノ教師をしながら、彼の帰りを待ち続けていた。
ある日、自宅で白玉団子を作っていると、突然、優介が帰ってきた。
見た目は、以前と全く変わっていない。
しかし、白玉団子を食べながら彼は、「俺、死んだよ。」 と、話し始めた。
瑞希は、混乱しながらも落ち着いて話を聞いている。
ふと、目が覚めた。
「変な夢だったな」 と、台所に戻ると、優介が使った食器が残っている。
辺りを見回すと、再び優介が現れた。
瑞希は「どこにも行かないで」 と引き留めると、優介は、旅に出ようと言う。
旅支度をしていると、瑞希が稲荷神社に奉納するために書いた、100枚の祈願書が出てきた。
「帰る時に燃やせばいいから」 と、優介は、それを持っていくことを勧めた。
電車に乗って最初に訪れたのは、優介が昔働いていた島影新聞店だ。
1人で新聞店を営んでいる島影は、優介と瑞希を歓迎してくれた。
二人は、ここに寝泊まりしながら、新聞店を手伝った。
しばらくして優介は、島崎も死んでいて、彼はその自覚が無いのだと、瑞希に話した。
島崎のパソコンを処分した夜、彼は消えた。
新聞店は、彼が死んだ日のカレンダーが残されたまま、廃墟になっていた。
次に二人は、優介が世話になった食堂を訪ねた。
神内夫婦もまた、暖かく二人を迎え入れた。
店の2階に、ピアノが置かれている。
おかみのフジエが、幼いころ亡くなった妹の話をし始めた。
自分のピアノを勝手に弾いている妹を、彼女は叩いたことがあり、その後しばらくして、病気で妹は亡くなったのだった。
フジエは、大きな後悔に苛まれていた。
話をしていると、フジエの妹が亡くなった当時の姿で現れた。
そして、瑞希の勧めで、ピアノを弾いた。
不思議な気持ちにさせられる作品だ。
亡くなった人を成仏させる旅だと分かってくると、いずれ、この二人も別れなければならないのかと、不安な気持ちが持ち上がる。