京都。
古物商、小池則夫が暖簾を掲げる「獺」に、テレビの取材が入った。
「あなたのお宝見せてえな」という生放送だ。
ベテラン鑑定家の億野万蔵と、陶芸王子と呼ばれている牧野慶太が店にやってきて、鑑定を始めた。
則夫が差し出した野田佐輔の作品を、億野は「五千円」と切り捨て、他のものも偽物呼ばわりして、放送が終わった。
その頃、佐輔はギャラリーで展示会を開いていた。
そこでテレビが映っていたため、客は何も買わずに出ていき、ギャラリーのオーナーは展示会の打ち切りを告げた。
贋作作りの名人でもある佐輔に、百万円で茶碗を作ってほしいという依頼があったが、胡散臭さを感じた彼は、応じなかった。
則夫の店に、美人の橘志野がやってきて、則夫に写真を見せた。
志野の美しさに、則夫はメロメロだ。
写真に映っていたのは、古田織部が本阿弥光悦に贈った織部焼の「はたかけ」、と呼ばれている茶碗だった。
それは志野の父親の形見なのだが、痴呆が進んだ母が、道具屋に売ってしまったのだという。
すぐに被害届を出したが、いまだに見つからない。
則夫は、20年前に「はたかけ」の偽物を作った佐輔にもう一度、作らせることにした。
また、同業者のピエールに、本物がどこにあるかを探らせた。
そして、本物は古美術店「嵐山堂」にあり、その価値は五千万円だと判明した。
則夫は、佐輔が作った偽物を志野に無料で手渡した。
ところが志野は、それをネットオークションに出品した。
軽いコメディである。