日本の映画である。
大正12年12月。
その犬は、東京帝国大学教授・上野秀次郎にもらわれることになっていた。
秀次郎は、最近、飼っていた犬が死んで、別れの辛さから、もう、動物は飼いたくなかった。
妻の静子も、飼うのには反対した。
しかし、一人娘の千鶴子に押し切られて、もらい受けることになった。
列車で運ばれてきた子犬は、上野家に着いたときには、ぐったりして死んだようだった。
しかし、秀次郎が牛乳を与えると、飲み始めた。
その夜、千鶴子の婚約者・森山が訪ねてきた。
森山は、千鶴子が妊娠していて、1日も早く結婚したいと申し出た。
結局秀次郎が世話をすることになった子犬は、彼によって「ハチ」と名付けられた。
元気なハチは、庭を走り回って、花壇をメチャクチャにしてしまう。
秀次郎は、ハチを散歩に連れていく。
しばらくするうちに、ハチは、毎朝、秀次郎が出勤するときに、渋谷駅までついてくるようになった。
そして、秀次郎が帰ってくる頃には、改札の外で待つようになった。
雨の日も、雪の日も、ハチは秀次郎を迎えに行った。
秀次郎は、ハチと一緒に風呂に入って、ハチをきれいにしてやる。
正月休みで千鶴子が孫を連れて帰ってきても、秀次郎は孫よりハチが可愛かった。
大正14年5月。
秀次郎が出勤すると、ハチの様子がおかしくなった。
大学で講義をしている最中に倒れた秀次郎は、そのまま、帰らぬ人となった。
忠犬ハチ公の物語は、誰もが知っている。
結末まで知れ渡っているものを、あえて映画にして、感動的な作品に仕上げたのは、見事だ。
ハチは、秀次郎と暮らしたのが、約1年半。
秀治郎が亡くなってから渋谷駅に通い続けたのは、約10年にもなる。
ハチの気持ちを慮ると、とても切ない。