日本の映画である。
若い女性が、ゾンビに追い詰められている。
「カット !! 」
42回目のダメ出しだ。
監督は、女優の下手な演技に、激しく怒りをぶちまけた。
なだめるゾンビ役の俳優に対しても、怒鳴り散らす。
スタッフが気をきかして、一旦休憩となった。
監督やスタッフが、外の空気を吸いにと、その場を離れた。
建物に残ったのは、女優とゾンビ役の俳優、そしてメイク担当の3人だ。
現場は、監督が見つけてきた廃墟で、旧日本軍が死体を蘇らせる実験をしていたという噂があった。
3人が話していると、外で音がした。
扉を開けると、ゾンビと化したカメラマンが襲ってきた。
助監督もゾンビ化していて、3人は逃げ回る。
そんな事態なのに、監督は「カメラは止めない」と言いながら、撮影を続けていた。
やがてメイクが殺され、最後に本当のゾンビになった俳優が、女優に襲いかかった。
女優は手にしていた斧で、ゾンビの首を切断した。
その後、女優は監督も殺し、屋上に描かれた五芒星の真ん中に立って、空を見上げた。
37分間のノンストップ映画「ONE CUT OF THE DEAD」の、終了だ。
1ヶ月前。
テレビで再現ドラマの監督をしている日暮隆之のもとに、プロデューサーからオファーが来た。
新たにゾンビ映画専門チャンネルを立ち上げるので、記念すべき第一回目に、ワンカット、ワンカメラのゾンビ映画を30分間、生放送でやりたいとのことだ。
無謀な話である。
しかし、ゾンビ役が娘がファンのイケメン俳優神谷和明ということもあって、日暮は引き受けた。
この作品は、前半がB級ホラー映画で、後半が、そのメイキングビデオみたいな構成になっている。
前半のシーンはシリアスさが際立っていて、引き込まれる。
後半はコミカルに描かれているが、脚本が緻密で、よく練られている。
秀作だ。