日本の映画である。
高校に入学した大島志乃は、初日の朝、制服に着替えながら自己紹介の練習をした。
教室。
担任は若い女の先生だった。
自己紹介が始まり、志乃の番になった。
吃音がある志乃は、極度に緊張して、なかなか言葉が出ない。
特に、母音から始まる言葉が出にくかった。
彼女が、やっと振り絞って出したのが「シノ・オオシマ」だった。
クラスのみんなに笑われた。
入学してしばらく経っても、志乃に友達はできなかった。
居場所がないように感じた彼女は、体育館の裏で、一人、弁当を食べた。
友達同士でするたわいない会話を、一人でなら吃らないでできた。
教室に戻ると、菊池という男子生徒から、吃音を揶揄われた。
下校時、自転車置き場に並んでいる自転車を倒してしまい、通りかかった女生徒に当たってしまった。
クラスメートの岡崎加代である。
不愛想で、いつも一人でいる生徒だ。
加代に「痛い」と言われたが、志乃は咄嗟に言葉が出せず、謝ることができなかった。
翌日、志乃が一人で弁当を食べている時、加代がスタスタと歩いていくのを見かけた。
志乃は、後をつけた。
加代は、階段に座って、イヤホンで曲を聴きながら口ずさんでいた。
音程が、酷く外れていた。
志乃が箸箱を落とし、その音で加代が気づいて、志乃を責めた。
加代は、自分が音痴なのを気にしていたのだ。
志乃は、昨日のことを謝りたかっただけのだが、ちゃんと声が出ない。
そんな志乃に、加代は「書けばいいんだよ」と言って、メモ帳とペンを手渡した。
「面白いことを書けば、それを上げる」と言われた志乃は、「おちんちん」と書いた。
海辺の小さな街での、青春物語。
「あの頃に戻りたい」と感じさせる。
予想通りの展開にならないのがいい。