韓国の映画である。
1972年、ソウル。
舞台俳優のキム・ソングンは演技が下手で、息子のテシクは学校でいじめられていた。
ソングンは、セリフを完全に暗記したことをアピールし、リア王の代役を得た。
その日、観にきていたテシクの前で舞台に立ったソングンは、緊張からセリフに詰まってしまった。
芝居は散々で、監督にも叱られ、息子も黙って帰ってしまった。
ソングンは、楽屋で一人、落ち込んでいた。
そこに、男が入ってきた。
男は、ある芝居のオーディションをするので参加して欲しいと言った。
ソングンは、オーディションに参加したが、無様な醜態を晒してしまった。
ところが、彼は一次審査を通った。
一次審査の合格者たちは、目隠しをされてバスで運ばれた。
そして、服を脱がされて、拷問された。
拷問に耐えたソングンは、合格した。
南北共同声明が発せられた朝鮮半島では、統一の機運が高まっていた。
韓国中央情報部 ( KCIA ) は、近々開催されるであろう南北首脳会談に備えて、さまざまな準備を行っていた。
その一つが、模擬会談だった。
ソングンは、北朝鮮の最高指導者、金日成主席役を決めるオーディションに合格したのだ。
ソウル大学演劇科のホ・サムウン教授が、つきっきりで演劇指導した。
それは単に演技だけでなく、「金日成ならどう考えるか」と、彼になり切ることを目的としたものだった。
やがてソングンは、金日成が乗り移ったようになった。
そこまでやったのに、南北首脳会談は開かれなかった。
これは、後味の悪い作品である。