中井貴一主演、日本の時代劇である。
明治三十二年、冬。
孫を診てもらっている間、斎藤は、ふと写真立てに目が行った。
それは、吉村貫一郎という男の写真だった。
幕末。
剣術の腕前を評価された吉村は、新撰組に入隊することになった。
その後の宴会で、斎藤は吉村の隣の席に着いた。
奥州・南部出身の吉村は、斎藤にお国自慢や家族の自慢をし、斎藤は不機嫌になる。
斎藤は、吉村を連れて屯所に帰る途中、殺すつもりで、いきなり斬りかかった。
腕は互角。
斎藤は、「冗談だ」 と刀を収めた。
ある日、新撰組隊士が殺された。
吉村は、傷跡から、斬ったのは左利きの斎藤だと気付き、斎藤から口止め料をせしめた。
かつて吉村は、盛岡・南部藩の藩校で教壇に立ち、学問と剣術を教えるほど優秀だったが、下級武士ゆえ俸禄が少なく、生活が苦しかった。
お金が無く、このままでは家族が冬を越せない。
吉村は、やむなく脱藩して上京し、羽振りのいい新撰組に入隊したのだった。
やがて大政奉還が行われ、新撰組は賊軍として追われる身になった。
吉村を演じている中井貴一が、素晴らしい。
強さと優しさ、そして計算できる頭の良さを備えた朴訥な吉村貫一郎に、惹き込まれる。