1945年8月9日。
長崎医科大学に通う浩二は、その朝も、慌ただしく登校した。
川上教授の授業の最中、閃光が走り、浩二は死んだ。
母、伸子は、それから3年の間、浩二の死を受け入れられなかった。
彼女は夫を早く亡くし、長男はビルマで戦死していた。
ちょうど3年経った日、浩二の恋人・町子と墓参りをして、ようやく踏ん切りがついた。
その夜、夕食を取っていると、浩二が現われた。
悲しまなくなるまで3年も待たされたよ、と浩二は言う。
その日から、浩二は時々現われて、母と話をした。
町子は、浩二に操を立てて「結婚しません」 と言っている。
浩二も町子に対する執着があり、町子が他の男と結婚するなど、考えられなかった。
町子は、小学校の先生をしている。
同僚の黒田が、町子に好意を寄せているようだ。
伸子は、助産院を営んでいて、忙しい。
商売上手な「上海のおじさん」 が、闇で仕入れたものを、時々、伸子のところに持って来てくれた。
町子も、時々やってきて、家の手伝いをしている。
脇役はいても、ほぼ、伸子と浩二の二人芝居だ。
浩二が亡霊となって出て来た時、母・伸子は、驚きもせずに受け入れる。
その演技が、あまりにも自然で違和感がなかった。
吉永小百合は、素晴らしい。
二宮和也の演技も、よかった。